米Amazonは9月28日(現地時間)、デバイス&サービス事業部門の新製品・サービス発表会を開催し、Alexa搭載の家庭用ロボット「Astro」を発表した。「宇宙兄弟」に登場するAIロボット「ブギー」のようにディスプレイの顔を持ち、車輪で家の中を自律走行する。動きがユニークで愛嬌があり、ホームセキュリティ、家族の連絡、エンターテインメントなど暮らしの様々なタスクをサポートする。革新的な取り組みをいち早く形にして届けるDay 1プログラムの製品(Day 1 Edition)として、まずは米国にて招待制のみで販売する。すでに米Amazon.comで招待枠への申込みの受け付けが始まっており、価格は1,449.99ドル、導入期間(introductory period)は999.99ドルの特別価格で提供する。
デジタルアシスタントを搭載した家庭用ロボットによって、人々の暮らしがより便利になる……家族の様々なタスクを手伝うロボットが少なくとも1台は家庭に導入される未来を思い描いてAstroの開発は始まったという。Amazonのデバイス&サービス部門が手がけてきたAI、コンピュータビジョン、センサー技術、音声、エッジコンピューティングの進歩を家庭用ロボットという1つのパッケージにまとめた。2014年に最初のAmazon Echoスマートスピーカーが登場してから7年。ユーザーからのコマンドを待つデジタルアシスタントではなく、自ら動く家庭用ロボットでデジタルアシスタントの新たな展開に挑む。
Astroは、10.1インチ(1280x800)ディスプレイの上部分にカメラと深度センサー/ナイトビジョンカメラ、ボディ前面にナビゲーションセンサーと障害物センサーを装備する。
位置特定とマッピングを同時に行うSLAM技術を用いて、自分の位置を捉え、高度なオンボードシステムによって常に変化し続ける家庭環境をリアルタイムで把握し、走行やコースを調整しながら自律的に移動する。例えば、普段は閉まっている床下収納のドアが開いていたり、目の前をペットが突然横切っても変化に即応して停止し、障害物の位置の変化などに合わせた走行コースにアップデートして走行し続ける。Amazonはその新しいナビゲーション技術を「Intelligent Motion」と呼んでいる。
また、ビジュアルIDという新しいコンピュータビジョン機能をサポートしており、個人を認識して、例えば特定の人に「(スナックなど)配達する」「リマインダーを知らせる」というようなパーソナライズしたサービスを提供できる。
ディスプレイを支えている部分に視野角132度、1080p撮影が可能なPeriscopeカメラを備える。外出後にレンジを切ったか不確かな時、スーパーで安売りの商品を見つけて買い増しておくべきか悩んだ時など、Astroに映像を送ってもらってレンジのスイッチや食品庫の状態などを外出先から確認することが可能。Astroは縦424mm、幅250mmで、高さが440mmと小型ロボットだが、潜望鏡のようにPeriscopeカメラを上方向に伸ばせるので高い位置の撮影にも対応できる。
他にも「Alexa Guard」との組み合わせで、煙や一酸化炭素、ガラス破損の音などを検出した際にアラートを送信させるなど見守り機能が充実している。サブスプリプション形式の見守りサービス「Ring Protect Pro」を契約すると、パトロールや不審な変化の調査、クラウドストレージへのビデオクリップの自動保存、外の怪しい動きに犬の吠え声といった様々なセキュリティ機能を利用できる。
自ら移動するAstroはユーザーの周りにAlexaをもたらす。Astroでポッドキャストや音楽を再生すると、ユーザーが別の部屋に移動しても再生したまま後をついてくる。スマートスピーカーのタイマー機能は部屋を離れた時にアラームが鳴っても気づかないことが起こるが、Astroはユーザーの場所までやって来て知らせてくれる。
特に高齢者や障害で移動が不自由な人にとって、Alexaが利用しやすくなる効果は大きい。家族とのつながりが強まり、生活の様々なタスクのサポートを得られる。Amazonは高齢者とその家族向けにデザインした「Alexa Together」という新サブスクリプションを提供する。緊急対応、アクティビティ警告、メッセージング、リモートアシスタントなどを含む。
Astroのディスプレイには顔文字のような表情が浮かび、ディスプレイの回転や本体の動きを通じて行動の意図を人々に伝える。表現力豊かで愛嬌があり、それがAstroの個性になっている。開発チームは数十万時間に及ぶ内部テストからのフィードバック、映画やテレビ番組、ゲーム、アニメーションなども参考に、Astroの独特なパーソナリティを作り上げたという。体験を通じて人々を楽しませ、接した人に共感のような感情を呼び起こすようにデザインした。例えば、よく料理するユーザーに対して、Astroはキッチンの周りを重点的に周回しながら手伝えるチャンスをうかがう。身近で家族に信頼される存在になることで、Alexaを搭載した家庭用ロボットが便利で役立つ存在に進化していける。