リレーアタックとは?
「リレーアタック」とは、スマートキーの機能の利用した車の窃盗の最新の手口。昨年の5月から日本でも被害が確認され、テレビニュースでも報道されているので、ご存知の読者もいらっしゃるかもしれません。
スマートキーは、鍵(送信機)をポケットやバッグから取り出さなくても、ドアハンドルを握るだけで解錠できたり、エンジンをボタン1つでスタートさせる便利な道具。両手が荷物でふさがっているときでも、鍵を取り出す必要がないことから、現在は多くの車で普及しています。
セキュリティに関わることもあり、自動車メーカーはスマートキーの詳細な構造については公表しません。しかし、実際にはローリングコードと呼ばれる暗号技術を使い、70センチほどの距離で鍵と車が応答するのがその原理。偽造はほぼ不可能だといわれていました。
ところが、本物の鍵と車との応答を特殊な通信機でリレーして、スマートキーが近くにあるように車に錯覚させる「リレーアタック」が登場しました。
リレーアタックの手口と原理。実際に使われる周波数などは国内法により異なります
近年にアムステルダムで開催されたハッキング対策カンファレンス「The hack in the box」でも、スマートキーから300メートル離れた車を盗難されてしまうことが発表されました。北京の警備会社の研究チームによって作られたそのプロトタイプは、なんと、たった22ドルで作られたそう。ひえ~!
というわけで、対策です。
リレーアタック対策とスマートさ5選
今回の記事では、実験として対策後にドアの近くで鍵が開くかでテスト。筆者の環境下でのテストですので、全ての盗難を防ぐものではありませんのでご注意ください。
筆者が最初にした対策はコレ。以前にEMP対策の記事を書くときに買った鉄の箱に入れましたがダメでした…。YouTubeなどでは茶筒のような密閉度の高い缶だと有効みたいですが、筆者の箱の場合は微妙な隙間から電波がもれているのか対策後も解錠が可能でした。
金属製(鉄製)の箱に入れてみた。フタを閉めても電波が漏れて解錠が可能だった
海外のレポートにもあるように、EMP対策とWi-Fiなどのセキュリティ対策は異なる実例かもしれません。
最新の車では、車の設定でスマートキー機能をキャンセルできる車種があります。筆者の車ではディーラーに頼まなくても、設定でオフにできるので便利です。しかし、エンジン始動の度にスマートキーを車のスタートスイッチに近づけるのが手間になるのがデメリット。
アルミホイルでしっかりと包むのは手軽に行える対策
余分な出費もなく、すぐにできる対策としては、アルミホイルでスマートキーをしっかりと包むという方法。(料理をしないので、家にアルミホイルがないという人は別ですが…)。スマートキーのサイズもほとんど変わらず手軽な方法です。筆者もアルミホイルの威力に驚いたのですが、この対策の欠点はホイルに耐久性がないことと、スタイリッシュじゃないこと…(笑)。
トヨタでは2012年12月以降、スバルでは2016年以降に販売された車のスマートキーでは、省電力モード(節電モード)機能が搭載されていることがあります。
筆者は次に紹介する「リレーアタック対策ケース」が届くまでの数日間、この方法を使いましたが、スマートキーのボタンが小さいために手間取ること、ウッカリ忘れることがあるためランキングの2位になりました。
自分の所有するスマートキーが省電力モードに対応しているかを調べるには、施錠ボタンを押しながら、解錠ボタンを2回押し、赤いLEDが4回点滅すれば対応済み。復帰するには、スマートキーのいずれかのボタンを押せば解除されます。
筆者はプラスチックの質感があまり好きではないこと、ポケットやカバンの中でスマホの画面などを傷つけてしまいそうなので、歴代のスマートキーはケースに入れて使っていました。
専用ケースの内側には電波を遮断する布が使われているのがわかる。チェーンやストラップは筆者が追加
そんなせいもあり、筆者が選択した第1位は電波を遮断するキーケースを使う対策。ただし、ケースによってスマホ用やICチップ搭載のクレジット用に作られた防護ケースも多いため、自分のライフスタイルやスマートキーのベストサイズを選ぶのに苦労するかもしれません。
筆者が留学していた米国では頻繁に目にしたり、耳にしていた爆音サイレンが鳴る警報装置やハンドルに取り付ける重厚なロック。ワイルドでちょっと憧れますが、日本の密集した住宅事情には合わないかも…と、筆者は個人的に思っています。
ただし、駐車場所が自宅から離れていたり、近隣に住居が少ない場所に留めるケースには有効でしょう。
最後に、窃盗と対策は日々進化するイタチごっこです。車両盗難に対応した保険オプションにも加入しておくも忘れないでくださいね。
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。