日本弁護士連合会(日弁連)は11月25日、鉄道事業者における顔認証システムの利用中止を求める荒(あら)中(ただし)会長の声明を発表した。
これはJR東日本が運営している防犯カメラの顔認証システムについて言及したもので、「過去にJR東日本の駅構内などで重大犯罪を犯し、服役した後の出所者や仮出所者」「指名手配中の被疑者」「うろつくなどの不審な行動をとった人」の顔情報をデータベースに登録し、これと主要110駅や変電所などに設置されたネットワークカメラ(8350台)に写った不特定多数の顔情報を自動照合し、不審者の通報に役立てようとしたことが問題視されていた。赤羽一嘉前国土交通大臣も9月の会見で「顔認証システムの運用に際しては個人情報保護にもじゅうぶん配慮するべく、今後、国交省として指導・助言をしていく」としていた。
赤羽前大臣は「(JR東日本から)出所者などをデータベースに登録しない方針であるという報告を改めて受けた」と述べていたが、9月22日の各社報道で指名手配中の被疑者や不審者については継続して検知を継続しているとあったことから、日弁連では、公共性が高い駅構内での顔認証システムの運用はプライバシー権を著しく損なう恐れがある上、すべての人を監視対象にすることにもなりかねず「警察の犯罪捜査体制に日常的に組み込まれているとも言うべき関係」になる点、不審者の概念が曖昧で恣意的な判断に委ねられる点などで「自由な市民社会が脅かされる」と憂慮。「市民のプライバシー権侵害の程度が大きいため、民間事業者が利用する場合においても、対象者の明示の同意を定めるなどし、かつ主権者の代表で構成される国会で必要性及び相当性などについて慎重に検討した法的ルールがないままなされるべきではない」と主張している。
声明では、すでにEU諸国では公共の場での不特定多数に対する顔認証システムの運用を原則禁止としており、アメリカにおいても州法などで法規制が進んでいるとも述べており、日本においても厳格な法律の定めにより運用されるべきで「利用者が同意しない場合、立法によっても容易に正当化されがたいことも考え合わせると、鉄道事業者による顔認証システムの利用は直ちに中止されるべきである」と結んでいる。