DS301にSX1000、ミニ・ジェム、ユニパワーGT ミニ・ベースのクーペたち 中編

レーサーとして快適性を犠牲にした軽量化

ブリティッシュ・グリーンのディープ・サンダーソン DS301とレッドのオグル SX1000 ライトウエイトGT

 DS301にSX1000、ミニ・ジェム、ユニパワーGT ミニ・ベースのクーペたち 中編

スマートなグラスファイバー製ボディを持つ、オグル SX1000。開発したデビッド・オグル社の取締役を、レーシングドライバーのジョン・ウィットモア氏が務めており、1962年にサーキット走行を前提とした軽量化版のライトウェイトGTへと展開する。【写真】ポップでレアなミニ・ベースのクーペ4台 オリジナルのクラシック・ミニも (68枚)オグルSX1000 ライトウェイトGTではボディシェルの重量が削られ、ロールバーを内蔵。簡素なインテリアにレーシング・バケットシートを組み、サスペンションは引き締められ、車高も落とされた。ウィットモアは、アメリカでの販売を考えるものの失敗。SX1000は転売されるが、最終的にはサーキットで軽快な走りを披露することになった。スポーツカー・クラブ・オブ・アメリカのイベントを戦うべく、チューニングを受けている。ガイ・ラブリッジ氏が所有する、真っ赤な1962年製SX1000のシャシー番号は037。ウィットモアがアメリカで売ったクルマだ。ディープ・サンダーソン DS301と同じく、筋金入りのレーサー。快適性を犠牲にして軽量化が図られている。オリジナルのミニを効果的に流用してあるため、運転した印象は、今回の4台で最も馴染みがある。ペダルやステアリングホイール、シフトレバーは、思った通りの位置にある。車内空間は、この手のミニとしては広い。だが、シャシー構造の一部が車内に食い込み、アクセルペダルが踏みにくい。つま先を横向きに倒す必要がある。

激しく吹け上がりコーナーへ食らいつく

オグル SX1000 ライトウエイトGT(1962年/北米仕様)

足首を曲げてペダルを傾けると、鋭いエンジンの応答が返ってくる。ル・マン24時間レースを戦ったDS301ほど突き詰められてはいないが、ホットにチューニングされたAシリーズ4気筒エンジンは、暴力的にパワーを撒き散らす。以前のオーナーによって、997ccのクーパーS仕様から、998ccのダウンドラフト・ウェーバー・キャブレター仕様に変えてある。ハイチューンのユニットにレーシーなカムシャフトが組まれ、右足の操作には気を使うほど。ハーフスロットル状態では、ギクシャク感が伴う。力を込めて回転数を高めるほど、ウィットモアの描いた夢を体験できる。激しく吹け上がり、コーナーの内側へ吸い込まれるように食らいつく。バランスの良いミニのように、パワーオンで脱出していく。クルマとしての欠点はゼロではない。それでも、短時間で仕上げられたSX1000は、成功と呼べる完成度にある。ところが、ライトウエイトGTの開発中に悲劇が襲った。1962年5月、英国のブランズ・ハッチ・サーキットへ向けてテスト走行していたオグルは、大型トラックと衝突。開発を終えることなく、この世を去ってしまった。SX1000 ライトウェイトGTの開発は、デビッド・オグル社でデザイナーを努めていたトム・カレン氏へ託され、会社も継承された。ところがカレンは1963年にモディファイド・ミニの生産を終了。小さなクーペは、69台で途切れてしまった。

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