EVsmartブログ電気自動車や急速充電器を快適に トヨタ『C+pod』一般販売開始も「買うのは春まで待った方がいい」かも 人気記事 最近の投稿 カテゴリー

1年前の予告通りに一般販売開始

トヨタが『C+pod(シーポッド)』を発売したのは2020年12月25日、クリスマス当日でした。この時は、販売対象は法人ユーザーと自治体などに限られていて、「新たなビジネスモデル構築など普及に向けた体制づくり」を進めるとされていました。そして、個人向けは2022年に開始するというアナウンスもありました。

【関連記事】トヨタが超小型EV『シーポッド』販売開始~超小型だけど電動化への大きな一歩(2020年12月26日)

それから約1年が過ぎて2021年の年の瀬も押し迫った12月23日、トヨタ『シーポッド』の一般販売開始を発表しました。1年前の予告通り、車が出てきたことになります。

価格は、いずれも税込みで、グレード『X』が165万円、『G』が171万6000円です。色は、標準ではボディとドアが白、ルーフが黒です。オプションでツートーン5種類と、スリートーン3種類のカラーを選ぶことができます。このへんは、法人向けとまったく同じです。

車のスペックなどは、前述したEVsmartブログの過去記事に詳しく紹介しています。ここでは車のサイズと出力だけ紹介します。

●全長×全幅×全高 2490mm×1290mm×1550mm●車重 G/690kg X/670kg●最高出力/最大トルク 9.2kW/56Nm●一充電での航続距離 150km(WLTCモード値 クラス1)●バッテリー容量 9.06kWh(177.6V/51Ah 48セル)●最高速度 60km/h●駆動方式 RR●乗車定員 2人

リース価格は店舗によって違いあり

では、どこで『シーポッド』を買えるのでしょうか。

リリースによれば、一部取り扱いのない店舗があるものの、トヨタ車両販売店やレンタリース店であればどこでも買えるようになっています。このほか、2022年春にはトヨタのサブスク『KINTO』での取り扱いが始まる予定です。KINTOでの取扱価格は、まだ発表されていません。

また、買えると言っても今のところ、販売方法はリース契約のみです。昨年の発売時に「普及に向けた体制づくり」を目指すとしていたので、車の保守サービスの拡充などをしていたのでしょうけれども、個人向けに販売するとなるとカバーしなければならない範囲がさらに広がるからでしょうか。

バッテリーのリサイクルの問題や、再販でユーザーを追跡できなくなり車の処分が管理できなくなることなどもあり、ユーザーを一定の範囲内に抑えたいのかもしれません。それでも、超小型EVというジャンルの認知度向上のためにも、もう少し販売先が広がるといいなあとは思います。

ではリース価格がいくらになるかというと、販売店によって変わるということ以外は、トヨタ本社からは明らかにされていません。トヨタ広報によれば、リースの場合は販売店が設定する契約内容によって価格に差が出るので、リリースには表記できないとのことでした。

例えば、契約期間中の点検頻度や点検内容、それに契約期間によって、月額の料金は変わります。詳細は販売店に聞かないとわかりません。

それなら近くの販売店でちょっと見積もりをしてもらおうかなと思ったのですが、この原稿を書こうと思った12月29日には、近所の販売店はみんな年末年始の休みに入っていました。お店が開くのは1月8日からのようです。仕方がないので、年明けを待つことにしたのでした。

まだほとんど売ってない!?

というわけで、ここからは新年明けまして、追加で書いている原稿です。

2022年が明けたので、筆者が住んでいる東京の販売店のいくつかに電話をしたりして、リース価格を聞いてみました。

電話に先だって、販売店に行った方が話が早いと思い外に出たついでにトヨタモビリティ東京の販売店に立ち寄り、「シーポッドは扱ってますか」と聞いてみました。東京ならすぐわかるだろうと思ったのです。それにトヨタモビリティ東京は、トヨタの直営店です。

甘く見てました。

なんと、店頭にいた人が『シーポッド』を知らなかったのです。「えーと、それは何でしょうか?」と聞かれたので、小さい、2人乗りの電気自動車なんですけど、「ちょっとうちでは、わかりません」と言われてしまいました。お店には夕方5時までなら使える普通充電器も設置されているのに、なんとも残念なことです。

これにショックを受けて、一店ずつ回ってる場合じゃないと思い、都内の販売店にあちこち電話してみることにしました。すると、電話した先はどこでもちゃんと『シーポッド』を知っていました。いったい、筆者が最初に行ったお店はなんだったのでしょうか。テニスラケットをカバンに入れてトレーニングウエアを着ていたから、まじめに対応するのが面倒だったのでしょうか。

それはともかく、現時点では、個人向けに『シーポッド』を扱っている販売店はあまり多くないようでした。

東京には、トヨタ直営のトヨタモビリティ東京の他、昔からの地場のネッツトヨタ東都、トヨタ西東京カローラ、ネッツトヨタ多摩という大手販売店があります。このうち、1月10日時点で『シーポッド』の個人向けリースを扱っていて、価格を即答してもらえたのはトヨタ西東京カローラだけでした。それ以外は、基本的には個人向けはまだ始めていないとのことでした。

では絶対に個人では買えないのかというと、そんなことはないようです。トヨタ直営のトヨタモビリティ東京は明確に法人向けのみでしたが、他の地場の販売店はいろいろ個別のツテがあるので、個人でも買える道筋がなくはないです。けれども、手続きがかなり煩雑になるのと、価格も高めになる可能性があります。このあたりは販売店次第です。

それにしてもです。トヨタのリリースには、「一部取り扱いのない販売店があります」と注意書きがありましたが、一部取り扱いのない販売店がトヨタ直営店というのは残念至極なのです。しかも、『シーポッド』を知らない人が直営店の店頭にいるなんて、谷啓さんが生きていたら「がちょーん」って言ってくれそうです。

EVsmartブログ電気自動車や急速充電器を快適に トヨタ『C+pod』一般販売開始も「買うのは春まで待った方がいい」かも 人気記事 最近の投稿 カテゴリー

ということで、電話で価格を即答していただけたトヨタ西東京カローラの系列店で聞いた月額のリース料は、ざっくり、リース期間が5年間で、3万7000円~4万円くらいとのことでした。定期点検や車検費用などが含まれています。

これは高いですね。仮に3万7000円で5年間だと、約222万円になります。車両本体価格が165万円からなので、それよりも高くなります。リースなので、契約期間が終われば手元には何も残りません。ちなみにKINTOでは、アクアが1万9910円からです。

とてもじゃないですが、「欲しい!」と感じる価格設定ではないですし、普及を目指しているとは感じられません。

一方で、このお店には問い合わせがかなり多く入っているそうで、注目度の高さは間違いないようです。でもこのリース料を聞いたら、みんなドン引きしそうです。お店の人も苦笑いしていました。

いったい、トヨタはこの車を何台くらい売ろうと思っているのか、ホントの所が知りたいですね。月に数十台だったりしたら、笑える冗談になりません。

買うのは春を待ってからが賢明

では、これから個人で『シーポッド』はどうやって買うのが得策なのでしょうか。ということも聞いて回ったところ、お店の人たちはみな、とても親切に教えてくれました。聞いた話を総合すると、次のような結論になります。

●買うのは春まで待った方がいい

最大の理由は、個人向けのリース契約の手続きが煩雑なことです。

現時点では基本的にトヨタレンタリース経由になるので、個人向けだと審査や手続きがかなり面倒になるようです。このため、個人でリース契約をするのはけっこう大変ですと、複数の方に言われました。

なお、ちょっと特殊ですが、ネッツトヨタ多摩では4月から自社リースを始めるという話も聞きました。これであれば、トヨタレンタリース経由よりも手続きが簡単になるそうです。いずれにしても春ですね。

加えて、あくまでも販売店情報ですが、『シーポッド』を今買っても、納車は4月になるだろうとのことでした。今のところは試験販売の意味合いが強く、トヨタも手探りで状況を確認しているようです。

だとすると、KINTOで『シーポッド』の取り扱いが始まるのも4月以降なので、それまで待つのが賢明ではないでしょうか。KINTOは個人向けの仕組みなので、通常のリース契約に比べるとずっと手続きが簡単だそうです。

また、KINTOの価格はまだ出ていませんが、通常のリース契約より安くなる可能性があると、これも複数の販売店の方が言っていました。

いずれにしても、急いで契約をするより、もう少し状況が落ち着いてからにした方がいいようです。

それでも、価格の高さは否めません。KINTOでどこまで価格が下がるかですが、現時点ででている月額4万円弱というリース料では、数多くの『シーポッド』を街中で見るようになるのは難しいでしょう。なんとかもうちょっと、がんばったお値段が出てきてほしいところです。

コムス、アミと比べてみた

ということで、最後に少しだけ、超小型モビリティについておさらいです。前述の過去記事で詳しく紹介していますが、軽自動車との大きな違いは乗車定員が2名に制限されてることです。もちろん車のサイズも違いますが、見ればわかりますね。

ところで小型のEVと言えば、トヨタには『COMS(コムス)』という代表車種があります。区分はミニカー(第一種原動機付き自転車)なので、定格出力が0.6kW以下、乗車定員1名という制限はあります。でも車の大きさの制限は、ミニカーと、型式指定の超小型モビリティで違いはありません。

ちなみに『コムス』と『シーポッド』のサイズはこんな感じです。

●コムス(P・COM) 全長2395mm×全幅1095mm×全高1500mm●シーポッド 全長2490mm×全幅1290mm×全高1550mm

乗車定員の関係で幅が少し違いますが、ほぼ同じようなものです。

目をヨーロッパに向けると、シトロエンの『ami(アミ)』という小型EVの代表車種があります。『アミ』は、フランスなどで『Quadricycle léger à moteur』(a light motorised quadricycle=軽自動4輪車)と呼ばれる規格の乗り物で、積載重量や最高速度などが制限されていますが、2人乗りで、なんといっても免許なしでフランスなら14歳、EUなら16歳から運転できるのが特徴です。

【関連記事】フランスの電器店で見かけた超小型EV~シトロエン『アミ』の存在感(2021年8月5日)

なにより大きく違うのは、価格です。『シーポッド』が165万円からなのに対して、『コムス』は79万9537円からです。そして『アミ』は環境自動車の控除を含めて税込6000ユーロ(約78万円)という車両価格もお買い得な感じですが、フランスなら長期レンタル契約で、頭金2644ユーロ(約35万円)と月額19.99ユーロ(約2700円)という低廉な料金で車という移動手段を手に入れられるのです。

日本でも地方に行けば徒歩や自転車では生活が厳しい地域は無数にあります。今はそうした地域では、普段の生活で時速100キロ以上もでる軽自動車が過剰な乗り物になることもあるでしょう。一方でガソリンスタンドまで10km走るような地域もあります。

そんなときに、自宅で充電できて、性能はそこそこで、とにかく手頃な乗り物があると、生活にずっと彩りが出るのではないでしょうか。

だから、心の底から『シーポッド』がもっと安かったらいいなあ、と思うのです。高齢化が進む社会状況や地方都市のインフラの変化などを踏まえても、超小型モビリティがカバーする用途がどういうものなのか、そのためにどんなスペックが必要なのか、どんなものをオプションにすればいいのかなど、考える余地はいろいろありそうです。

せっかく4輪がついた車なので、1名乗車より2名乗車の方が使い勝手はいいでしょうし、扱いやすさを考えると高齢者の日常の足にも適してるように思います。でも170万円となると、新車の軽自動車が買えます。中古車なら普通自動車も買えます。

リース価格も、最近は数千円から1万円台で普通に乗用車が乗れるようになってきました。それに比べると月額4万円弱というのは、とんでもなく高い料金です。

せっかくの超小型モビリティ分野のEVです。少しでも売れて認知度が上がるようなパッケージになってほしいなあと思うのです。トヨタならできるんじゃないのかなあと、思わずにはいられないのです。

(取材・文/木野 龍逸)

※リース代の総額を訂正しました(2022年1月11日)

カテゴリー