パナソニックは1月13日、大和ハウス工業、アスカネットと共同で、空中タッチディスプレイを利用した「触れずに操作するインターフォン」の実証実験を行うと発表。大和ハウス工業が川崎市で開発中の分譲マンション「プレミスト津田山」のモデルルームにて、メディア向けの体験会を開催しました。空中操作の体験レポートをお届けします。
コロナ禍の昨今、非接触操作が推奨されるようになりました。たとえば近年のマンションでは、住人が自動車のキーのようなスマートキーを利用して、エントランスから自室のドアまで何にも触れずにたどり着ける仕組みを導入している物件もあります。
一方で通販の配達などが増え、来訪者がエントランスのインターフォンで住人に解錠を求める機会も増加。インターフォンの操作にはどうしてもボタンへの接触が発生することが、不動産業界にとってひとつの課題だったといいます。今回、三社が行う空中タッチインターフォンの実証実験は、この課題解決を目指したものです。
空中タッチインターフォンは、大和ハウス工業とパナソニックが開発した非接触でも入居者を呼び出せる技術に、アスカネットの開発した空中ディスプレイ「ASKA3D」と、パナソニック製のインターフォンを連携させたもの。実証実験は「プレミスト津田山」のモデルルームで1月15日からスタートし、約半年間の試用後、約一年かけて製品化し、市場に投入する予定とのことです。
ASKA3Dの仕組みは、空中へのボタン操作画面の投影と、ユーザー操作のセンシングを組み合わせたもの。まず、液晶ディスプレイに表示した映像を、特殊な反射材を用いた「ASKA3Dプレート」で反射させて空中結像を起こします。同時に、空中結像部分に5cmほどの厚みを持った赤外線センシングの領域を設け、ユーザーの操作を読み取ります。
実験では、液晶ディスプレイに映像を映し出す装置として小型のWindows PCを用い、エントランスを暗証番号で解錠する操作と、来訪者用の呼び出し操作を受け付ける内容。実際に、エントランスのドアをオープンできました。空中タッチインターフォンは、すぐ上にある実際のインターフォンを擬似的に操作する形を取っています。
テストするユーザーがインターフォンの手前、5メートルほどに近寄ると自動的に「ここにタッチしてください」という表示が流れ、インターフォンの呼び出しボタンが。
実際に試してみたところ、像が浮かんでいる場所に指を当てても、何にも触れないのはやや奇妙な感覚ですが、操作そのものはすぐにコツをつかめました。
【動画】横から見ると非接触で操作していることがよく分かります
タッチディスプレイをタップするときのような小さな動きではなく、指を押し込むように意識して大きく動かすのがコツ。何回か試せば誰でも操作できるようになる印象です。
空中タッチインターフォンは、非接触なので指紋で汚れることもなく、手が濡れていても汚れていても問題なし。静電容量方式のタッチ操作のような、体質による認識の誤差はなく、ボールペンなどでも指と同じように操作可能です。これなら、他人の触れた場所は直接触れたくないという人でも安心。一年以上先と言わず、一日でも早く製品化して普及させてください。
原理的には、押し込む操作だけでなく、スワイプやピンチも可能です。会場に置かれていた説明用の7インチと10インチの機材では、インターフォンとは異なる画面を表示して、スワイプ操作が試せました。アスカネットでは13インチの機材も企画中とのことです。
今回の実証実験では、lモデルルーム来場者を対象として、画面の見やすさ、明るさ、操作の反応速度などをアンケートし、耐久性も検証。将来は実験の結果を踏まえて新築の分譲マンションだけでなく、既存のマンションや、店舗、オフィスビルなどへも導入の可能性を探っていく予定です。
なお、今回の実証実験に参加できるのは予約制のモデルルーム見学者のみ。運営や実験の経過しだいでは、操作してみたいというユーザーを受け付けることも検討したいとしていますが、当面はモデルルーム見学者のみを対象にするそうです。また、プレミスト津田山には本システムの導入予定はないとのこと。プレミスト津田山への入居を検討している方々はご注意ください。