「鍵のない世界を実現したい」——26歳でスタンフォード大を中退した理由

スマートフォンなどを用いて開閉・管理を行う「スマートロック」。日本では2015年に相次いで発売され「スマートロック元年」と言われたが、今のところそれほど普及は進んでいない。

そんな中、2017年にアメリカから上陸した「SESAME(セサミ)」の評価が高まっている。2018年8月には、小型軽量化した日本仕様の「SESAME mini(セサミミニ)」もローンチし話題を呼んでいる。

開発しているのはサンフランシスコ、東京、台北に拠点を持つCANDY HOUSE。1988年生まれ、30歳のCEO、ジャーミン・グー氏に「スタンフォード大学を中退してまで叶えたかった」夢について聞いた。

スタンフォードの学生寮で生まれた

シリコンバレーでスマートロックのベンチャー企業を立ち上げた、CANDY HOUSE JAPANのCEO、ジャーミン氏

——なぜスマートロックの事業を始められたのでしょうか?

25歳のときアメリカ・スタンフォード大学に留学しました。台湾から来た僕は、アメリカのキャッシュレス生活にカルチャーショックを受けました。台湾も、日本と同じように現金社会。すぐクレジットカードを作りに行き、財布を持ち歩くことをやめました。そのとき考えたのが、鍵も持ち歩かなくて済むようにできたら、ということです。

そんな思いから2014年、友人と共同購入した3Dプリンタを使ってスマートロックのプロトタイプを作成。「鍵を持ち歩かない社会」を現実にしたい、という一心でした。

VCとクラウドファンディングで資金調達

日本の住宅向けに開発されたセサミmini(左)と元となっているUS版のセサミ(右)。家のドアの内側に簡単に取り付けられる。外側の鍵の差し込み口は何も変わらないので、従来の鍵もそのまま使える。

それにはまず資金調達です。2014年にベンチャーキャピタルから約3000万円を調達。2015年にはアメリカのクラウドファンディング「Kickstarter」で約1億4000万円を集めるなどして、会社の設立資金に充てました。そして、1年で弊社のスマートロック・シリーズの第1弾「セサミ」を製品化したところ、アメリカで大ヒット。日本でもこの便利さを体験してもらえたら、と思ったのです。

シェアオフィス、シェアハウス、民泊に便利

——日本向けの商品は、アメリカで展開する商品とはどのような違いがありますか?

日本の家屋は、アメリカに比べて小さいですよね。日本向けの商品「セサミmini」は、セサミを小型軽量化しています。現段階でおそらく世界最小・最軽量クラスといえるでしょう。仕様はセサミとほぼ同じながら便利な機能はそのままに、ギアの耐久性は3倍、Bluetooth通信距離は110%延長、電池の持ちも110%増加しています。

「鍵のない世界を実現したい」——26歳でスタンフォード大を中退した理由

セサミやセサミminiによって鍵の持ち運びが不要になり、開閉はもちろん、合鍵を作らずアプリだけで鍵をシェアしたり、遠隔操作で友人のために鍵を開けたりできます。

個人の住宅だけでなくシェアハウスやシェアオフィス、民泊などでも、誰がいつ鍵を開閉したか履歴をアプリに記録できる。Googleアシスタント、Amazonアレクサ、Siriにも対応しています。

低価格で高性能、シンプルな操作とデザイン性に優れており、現在、アメリカ、日本、カナダ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェイ、シンガポール、マレーシアなど世界中で約5万台お使いいただいています。

工事の必要もなく後から簡単に取り付けられるタイプなので、従来の鍵を使って開閉することもできます。

鍵の必要ない世界を。アプリで鍵を管理!スマートロックSESAME セサミmini 販売中 | Makuake(マクアケ)

知られていない「軍事レベル」のセキュリティ

スタッフとともにセサミシリーズの改良、新商品の開発に取り組むジャーミン氏。

——今後、日本のスマートロック市場はどうなっていくでしょう?

アメリカではスマートロック開発会社は約20社、中国は約2000社もある中、日本はまだ3社程度。そもそもスマートロックというものがあまり知られていない状況です。

日本は保守的と言われ、スマートロックの安全性に不安もあるようですが、セサミでは軍事レベルとも言える強固な暗号化システムを採用している。突破するのはほぼ不可能で、それにチャレンジするくらいならもう扉を壊す方が早いでしょうね。

現在、セサミシリーズのユーザーは7割が個人。私たちはAPIを一般公開したり、IFTTT(異なるwebサービスを組み合わせて連携させることのできるサービス)に連携するなど自由度が高く、カスタマイズもできる点から、ガジェットや新しいものに敏感な方に使ってもらっています。ただ、最近はユーザーの幅もより広がっています。

「オートロック機能があり、とても便利」 「うっかり締め忘れていないか外出先から確認できて安心」「実家で暮らしている両親の安全のために付けた」、共働き家庭では「子どもが開けたときに通知が来て安心だし管理しやすい」という感想をいただいています。

新築マンションへの内蔵型も増えている

セサミminiなら手ぶら感覚で鍵の開閉が可能。オートロック機能の設定でセサミが帰宅を察知して解錠。手ぶら解錠機能の設定でセサミが帰宅を察知して解錠、自動で施錠するオートロック機能で鍵の閉め忘れも防止できる。ポケットに入れたままスマホをノックすると解錠される機能もある(現在iOSのみ)。

いまは後付けタイプの販売がメインですが、すでに台湾の大手鍵OEMメーカーと組んで、セサミを鍵に組み込んだ内蔵型の商品を開発。アメリカの大手ホームセンターに卸しています。

日本でも、ある電子ロックメーカーと商品を共同開発中。2018年の年末には中国南京市から依頼を受けて、新築マンションの全室で内蔵型セサミが導入されることになりました。

これからは、スマートロックがなくてはならない社会になる。より多くの建物に、スマートロックが組み込まれていくと予想しています。

鍵のない社会をつくりたい

新しいアイデアをクラウドファンディングで支援するサイト「Makuake」で10月30日まで支援者を募集中。期間中なら特別割引価格でセサミminiを入手できる。

——今後のビジョンを教えてください。

アメリカではスマートスピーカーやIFTTTを介したさまざまなサービスとクラウドの連携 、中国では顔認証や指紋認証、日本ではSuicaなどのカード機能……など、先端技術を取り込んだ製品開発が進んでいます。私たちはこのような流れに対応し、より多くの人が使いやすい製品を開発しているところです。

APIを無料公開しているので、近い将来には家の鍵だけでなくガレージ、車、ロッカー、あらゆる鍵をスマホで管理できる鍵のプラットフォームを作りたい。そして、鍵を持ち歩かない世の中を現実のものにしたいと思っています。


SESAME miniの詳細はこちらから

2018年10月30日までの限定でMakuakeにて、セサミminiを特別割引価格で案内中。

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