新造車両や大規模改修車両は車内防犯カメラ必須に…国交省がまとめた車内傷害事件対策

国土交通省は12月3日、京王電鉄(京王)京王線で10月31日に発生した車内傷害事件を受けて取りまとめた今後の対策を明らかにした。

この事件の前、8月6日に小田急電鉄(小田急)で発生した車内傷害事件では、JRや大手私鉄、公営地下鉄などの鉄道事業者を集めて再発防止の意見交換が行なわれ、警備の強化や最新技術を活用した不審者や不審物の検知、非常通報装置などの位置をピクトグラムなどを活用してわかりやすくするなどの対策がまとめられたが、京王線の事件を機に再度意見交換が行なわれ、5項目の内容がが取りまとめられた。

京王線の事件では、非常通報装置を作動させても乗務員が非常事態を認識できず、非常用ドアコックの作動で国領駅(東京都調布市)に緊急停車したものの、列車のドアとホームドアの位置が合わず、ドアが開かないことに業を煮やした乗客が開閉可能な窓から脱出するひと幕があった。

新造車両や大規模改修車両は車内防犯カメラ必須に…国交省がまとめた車内傷害事件対策

そこで、今回の取りまとめでは「乗客の安全な避難誘導の徹底」として、複数の非常通報ボタンが押されかつ内容を確認できない場合は、緊急事態として防護無線の発報などで他列車を停車させるとともに、自列車も速やかに適切な場所に停車させる措置を採ることを基本とし、ホームドアと列車のドア位置がずれた場合でも、双方を開け、乗客を安全に誘導・脱出させるとした。

また、小田急の事件で取りまとめられた非常用機器をわかりやすくする点については、路線の特性や機能に応じて、その方法を共通化する「各種非常用設備の表示の共通化」を検討・実施するとしている。

このほか、「利用者への協力呼びかけ」として、乗車時に非常通報装置の位置を確認し、非常時には躊躇なく装置を押すことを利用者に呼びかけること、「車内の防犯関係設備の充実」として車両の新造時や大規模改修時に録画機能のみであるものを含み車内防犯カメラを設置し、映像や音声により車内の状況を速やかに把握できる方法を検討することが挙げられている。

取りまとめられた5項目には手荷物検査についても言及されているが、これについては「手荷物検査の実施に関する環境整備」として、7月に改正された鉄道運輸規程に基づく危険物持込み防止のための手荷物検査の実施について理解と協力を求めるとともに、持込禁止品目をわかりやすくし、不審者を発見した場合の対処方法や検査のノウハウの共有、訓練の実施などについて警察と連携を図るとしている。

これら5項目の具体的な方策の検討・実施については、各鉄道事業者が鉄道事業法に基づき選任する安全統括管理者の会議を活用して決めていくとしている。

なお、小田急の事件を契機に主要な鉄道事業者31社局と警察が共同で非常事態を想定した訓練を実施しており、11月26日時点で86件が実施済だという。2021年内には100件以上になる見込みで、2022年1月以降も実施される予定。

11月24日に東京地下鉄(東京メトロ)と警視庁大塚警察署が共同で実施した不審者の取押え訓練。