金沢大学の渡辺哲陽教授らの研究グループは、パナソニックと共同で二つの把持モードを持った変形グリッパーを開発した。挟むと平行把持となり、ハンドをテーブルに押し付けると、めくり把持の指の形になる。シンプルなリンク機構で変形を実現。薄さ0・05ミリメートル、重さ7ミリグラムの対象を弾かずにつかめる。プラスチックシートや紙、ワッシャーなど平行グリッパーだけではつかめないハンドリング用に提案する。
平行グリッパーで薄いプラスチックシートをつかもうとすると、曲がったり、跳ねて飛んだりする。そこで2本の指をテーブル表面から30度の角度になるようにする。片方の指がすくい上げ、もう片方の指が対象を押さえるように働く。
この変形をテーブルに押しつけるだけで実現した。すくい上げる指はねじりバネ式の受動ジョイントで折り曲がる。押さえる指は6リンク機構ですくい指と平行になるように曲がる。指にシリコンの滑り止めを貼り付けた。すくって押さえることで把持対象が折れ曲がってバネのように跳んでいくことを防ぐ。
2本の指はテーブルに押しつけなければ平行グリッパーとして使える。ナットやボルト、厚みのあるワッシャーなどを把持できた。一方、平行把持ではつかめない紙やビニールシート、スプリングワッシャーなどはめくり把持でつかめた。
通常は平行把持だが、部品が倒れて平行把持でつかめなくなる場合でも対応できる。多種多様な部品をトレーに並べる配膳工程にも向く。製品に合わせてハンド交換などの必要がなく、機構で実現したため信頼性も高い。
日刊工業新聞2021年6月21日