COSMOサービスステーションで電気自動車用急速充電器とEVカーシェアを体感

※冒頭写真提供/コスモコスモエネルギーグループ

サステナブルな社会実現に向けて取り組みをスタート

2021年4月7日、コスモエネルギーグループ(以下、コスモEG)のコスモ石油マーケティングが『再生可能エネルギー(風力)によるEV向けモビリティサービスを開始します』と題したニュースリリースを発信しました。

脱炭素化社会へのシフトをはじめ持続可能な社会の実現に向け、EVを軸とした新たなモビリティサービスの創出を進める取組として、全国各地のSSへの急速充電器設置と、SSを車両拠点としたEVのカーシェアリングサービスをスタートするというものです。

急速充電器には系列のコスモエコパワーの風力電源に紐づく非化石証書を用いた実質CO2排出ゼロの電力である『コスモでんきビジネスグリーン』による電力を供給。急速充電器を利用する電気自動車は、実質CO2排出ゼロの電力で充電できることになります。

今後の計画などを質問してみました

コスモ石油マーケティングがe-Mobility Power(以下、eMP)との連携で系列SSへの急速充電器設置を進めることは、2020年6月に発表されており、EVsmartブログでも記事として紹介しました。今回の発表は、そのプランが進んで設置がスタートし、EVカーシェアというトピックも加わって広げていくぞ、ということです。

コスモ石油マーケティングのEV充電サービスについては、公式サイトでも解説されています。今回発表された『e-Mobility Power充電サービス』の急速充電器が設置されたのは首都圏の4SS。ほかに同社が従来から独自で展開していた『COSMO EV CHARGE』の急速充電器を設置したSSが4カ所あります。eMP提携の充電カードでCOSMO EV CHARGEの急速充電器を利用することはできません。

これから、どのようにサービスが拡大していくのか。4月のニュースリリースからだけでは読み解けないポイントを、コスモEGに質問してみました。

●急速充電器はeMPが設置するんですね?

その通りです。eMP社が急速充電器の設置を行い、コスモエネルギーグループがSSを充電インフラ拠点として活用し、 EVのお客様へのカーケアサービス提供や、コスモエネルギーホールディングス株式会社の100%子会社であるコスモエコパワーによる実質再エネ100%電力の供給を行います。実質再エネ100%電力の供給は、2021年5月14日現在『セルフピュア新宿中央』が対象です。

●eMP充電サービス取扱SSの今後の拡大予定は?

eMP社との共同事業によりeMP充電サービスを提供する急速充電器を設置しているSS SSは、現時点ではセルフピュア新宿中央の他、セルフピュア谷津(千葉県習志野市)、セルフNEW江東SS(東京都江東区)、セルフステーション寒川倉見(神奈川県高座郡寒川町)で、計4SSが運転を開始しております。今後も拡大していく計画です。今年度末時点では、計30SS以上への設置完了を予定しております。

●設置基数や出力などのビジョンは?

設置する充電器の機種・スペックは、eMP社が選定します。現状当社系列SSに設置しているものは、2口タイプの120kW(谷津)と1口タイプの50kW(新宿中央等)があり、なるべく2口タイプを設置する方向で進めています。ただし、2口タイプは2台同時充電が前提のため、2台分の駐車スペース確保が必要であり、それが難しい場合は1口タイプ(50kW)にしています。

●再エネ100%電力の供給拡大は?

現時点ではセルフピュア新宿中央1カ所において、コスモエコパワーの風力発電由来の実質CO2フリー電力を供給しております。

同SSは、急速充電器に限らずSS全体の電力も実質再エネ電力(コスモエコパワー風力発電由来)となっています。また5月11日の当社グループプレスリリース『コスモエネルギーグループ直営全SSの100%実質再生可能エネルギー電力化について』(https://com.cosmo-oil.co.jp/press/p_210511/index.html)の通り、当社グループは今後、直営全SSの実質再エネ電力化にも取り組んでまいります。

●従来の『COSMO EV CHARGE』も継続しますか?

既設の充電器およびCOSMO EV CHARGEの運用は今後も継続する予定ですが、当該サービス用の充電器を新設し、拡大していくことはございません。

また、COSMO EV CHARGEのサービス提供中の充電器をeMP充電サービスに切替する予定はございません。ただ今後、機器老朽化のタイミング等で、eMP社との共同事業による充電器に入替設置することについては随時検討します。

●EVカーシェアは実施の期限などはありますか?

期限は設けておりません。続けてまいる予定です。

COSMOサービスステーションで電気自動車用急速充電器とEVカーシェアを体感

●EVカーシェアは今後拡大していきますか?

前提として、EVカーシェアは急速充電器が無いと運用が難しいと考えています(普通充電ではあまりにも充電に時間を要するため)。当社グループはeMP社との提携により、当社系列SSへの急速充電器設置を推進していますが、この取組により急速充電器を設置するSSのうち、いくつかのSSで新宿中央同様、EVカーシェアを展開できればと考えています。具体的な目標は、セルフピュア新宿中央の状況やEVやカーシェアの普及動向等もウォッチしながら、これから詰めていくところです。

●コスモエコパワーはどんな電力会社なんですか?

コスモエコパワーは1997年に日本初の風力発電専門事業者として創業した会社です。以来、サイト開発から発電所の設計・建築、操業・メンテナンスまで一貫して実施できる体制を構築し競争力強化に努めております。

●一般家庭への電力小売サービスは?

2019年4月より一般家庭向けの電力小売サービス「コスモでんき」を展開しております。その後、2020年10月以降、法人にも対象を拡げて「コスモでんきビジネス」を販売開始しております。地球温暖化などの環境問題に対するお客様の意識の高まりに応えるべく、個人・法人ともに非化石証書等でCO2排出量をオフセットし実質的に再生可能エネルギー由来の環境価値を持つCO2フリー電気を提供する「コスモでんきグリーン」「コスモでんきビジネスグリーン」も同時にご用意しております。

●再エネ100%電力供給の仕組みは?

風力発電会社であるコスモエコパワーの風力発電所由来のトラッキング付非化石証書(※)を活用した実質CO2フリーの再エネ由来電気を供給しております。セルフピュア新宿中央(東京都新宿区)は、コスモでんきビジネスグリーンを供給しており、先般5月11日のリースの通り、今後は、セルフピュア新宿中央以外の直営全SSについても、コスモでんきビジネスグリーンを供給してまいる予定です。(※)非化石証書とは、再生可能エネルギーや原子力に由来する電気の非化石価値を分離し、取引を可能にするためその非化石価値を証書化したものです。一般社団法人日本卸電力取引所の運営する非化石価値取引市場において取引されます。トラッキング付き非化石証書とは、電源種や発電所所在地などの属性情報が付与された非化石証書を指します。

●他社法人でも申し込み可能ですよね?

はい、可能です。当社グループのSSに限らず、「コスモでんきビジネスグリーン」をご契約いただくことで、一般の法人のお客様もご利用可能です。

「コスモでんきビジネスグリーン」はRE100にも適応しております。RE100やRE Actionに参加している、或いは参加の検討をしている企業様など、環境意識が高まっている法人のお客様のニーズにお応えできる電力プランとなっております。

質問と回答はここまで。

石油元売りとして業界3位のコスモEG。エネオスや出光興産もそれぞれにモビリティ電動化に向けた取り組みを進めていますが、コスモEGとしてもグループ企業の強みやeMPとの連携によって「新たな道」を切り拓こうとする強い思いを感じます。

実際に急速充電とカーシェアを体験してみました

せっかくなので、セルフピュア新宿中央でEVカーシェアと急速充電を試してみました。

EVカーシェアは、コスモ石油マーケティングが従来から展開しているSSを拠点とした『やさしいカーシェア』というサービスの1車種として実施されています。もちろん事前の会員登録が必要ですが、入会金や月会費は無料。電気自動車(EVクラス)は1時間800円、6時間パックで4500円と比較的リーズナブルに利用できます。12時間パック以上は16円/kmの距離料金がありますが、詳しくは公式サイトを要チェック。

登録は簡単。公式サイトから免許証の画像などを送って申し込み、2時間ほどで「会員登録完了」のメールが届きました。

さっそく予約。ログインして予約開始、終了日時を入れて、セルフピュア新宿中央SSを選び、と、この予約画面が少々使いづらいのは、今後の改善に期待したいと感じました。

利用当日はとなりのビルの地下駐車場に自分のリーフを停めて、なにはともあれ1時間の利用体験。ドアロックの解除はリアウインドのリーダーに免許証をかざすだけ。40kWhリーフの充電量は96%でした。

予約したのは1時間だけだったので、中野坂上あたりまでぐるりと走り、新宿中央公園で借りた証拠写真的に軽く撮影して返却。なんとも、お手軽でスムーズです。

私はかつて、大手カーシェアサービスの会員でしたがリーフを買って退会。その後、取材がてらホンダの『EveryGo』とか日産の『eシェアモビ』、個人間カーシェアサービスの『Anyca』や小田原の『eemo』、さいたま市でFOMM ONEのシェアをやってる『HELLOW SCOOTER』などの会員になっていますが、いずれも『やさしいカーシェア』同様に入会金や月会費などは無料(もしくは無料を選択可能)です。

個人的にもうEV以外はレンタカーでもあまり乗りたくないので、EVを中心に、こうしたお手軽カーシェアサービスが広がれば、都会で暮らす分にはマイカー無しでもほとんど移動には困らない生活が送れそうです。それぞれのサービスは各企業や地域の拠点を限定したもので、大手レンタカーチェーンのように全国くまなく網羅するほどではないですが、アプリやウェブで手軽に入会や予約、乗り捨てなどができる仕組みが広がれば、旅行する時のレンタカー代わりにもなりそうです。

EVシフトとともにMaaSの進展も注目されているわけですが、着々と社会は変わりつつあるんだなぁと実感する1時間となりました。

急速充電器はチャデモ50kW級

シェアカーで帰着後、となりのビル駐車場から自分のリーフを移動してきて急速充電器も試してみました。うっかりメーカー名やスペックのシールなどを確認し忘れましたが、今まで使ったことがない50kW出力器です。eMPではABB製の120kW級出力器から最大90kWのケーブル2本出しで高出力急速充電インフラ整備を進めていくことを発表しているので、この50kW器は東光高岳製とのこと。今まで見たことがない液晶表示だったので、eMPがこれから展開していく新機種だと思います。

液晶表示もわかりやすいのですが、カード認証の場所が本体正面の説明書きの下。地味目にモノクロの「IC」マークになっているので最初は気付かず、液晶部分にカードを当てて「あれ? 認証されないぞ」と数秒間戸惑いました。

ちなみに、カーシェアで借りたリーフは今回まだ90%以上電池が残っていたので充電しませんでしたが、自分のリーフを充電しつつシェアカー車載のマニュアルを読むと、利用終了後は目の前の急速充電器で充電してね、となっていました。マニュアルのファイルには日産『ZESP3』カードも備えられています。

ともあれ、トイレや休憩スペースもあるSSの充電インフラはやっぱり便利です。充電器もEVカーシェアも、コスモ石油のチャレンジがさらに進展することに期待しています。

(取材・文/寄本 好則)

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