消防関係者にCRMスキルを広め、事故のない職場の実現を目指す上樂隊員
消防活動中の事故を減らそうと、県東部消防組合の上樂航隊員(33)がオンライン勉強会を開き、受講者は1年間で千人を超えた。上下関係がある隊員のコミュニケーションの敷居を下げる必要性を訴え、「人命を預かる隊員が危機管理意識を共有できる環境を整えたい」と話す。 上樂隊員が普及を目指すのは、航空業界で浸透する安全管理スキル「CRM(クルー・リソース・マネジメント)」だ。「安全管理面で人員や資機材、情報の全ての資源を有効的に活用する」という概念で、現在はチーム医療にも導入されている。 2017年から3年間、魚津消防署から県消防防災航空隊に派遣された。09年以降に全国で4件発生した防災ヘリ墜落事故も教訓となり、CRMの重要性を肌で感じた。 来年度から全国の消防防災航空隊にCRMが導入されるため、「地上部隊でも取り入れるべき」と昨年12月にオンライン勉強会を企画。全国の消防署員ら約50人が参加した。会員制交流サイト(SNS)上で共感の輪が広がり、1年間で北海道から沖縄まで全国の消防関係者を相手に50回以上開いた。
上樂隊員は勉強会で必ず「上司の勘違いを指摘できますか? 部下はミスを指摘してくれますか?」と問い掛ける。消防事故の8割は人的要因が占めるため、立場に関係なく危険要素を確認し合えるチームづくりが必要だと強調する。状況認識、意思決定、ワークロードマネジメントなど概念項目を挙げ、隊員の知識、技量、資機材の能力を発揮するには、良好な人間関係を育まなければいけないと呼び掛けている。 最近は、隊員と管理職が一緒に参加する勉強会も増え、「危険な場面で声を上げられなかった」「意識改革の参考になる」といった感想が届く。上樂隊員は「CRMが消防業界で当たり前になり、事故がなくなることを願う」と活動を続けていく考えだ。
最終更新:北日本新聞