映像AIのビジネス活用を実現! WebRTCをベースにしたEDGEMATRIXの強みとは

サービスとして提供されるクラウド型は、設置や設定が容易なため小規模なプロジェクトでも試しやすい。カメラをクラウドサービスにつなぐことができれば簡単に利用を開始できるうえに、ストレージ容量も柔軟に拡張できるメリットがある。

導入が進んでいるクラウド型であるが、課題もいくつかある。ストレージもコンピューティングもクラウドに依存するため、サービスの障害やメンテナンスの影響を受けることが多い。機能の多くはベンダーが提供するものであるため、完全に制御できるわけではない。また、人物の顔・姿など、セキュリティやプライバシーの問題でクラウドへの映像保管が望ましくないケースもある。

「最大の問題はネットワークです。クラウドに映像を送って処理するため、リアルタイムな検知や分析には適していません。たとえば防犯に利用する場合、映像を分析して速やかにライトを点灯させたり音声で警告したりできなければ意味がありません。山間部など僻地で利用する場合、ネットワークパフォーマンスが問題になるケースもあります」と、佐藤氏は指摘する。

そこで注目されているのが、エッジコンピューティングを活用したエッジ型である。映像が生成されるカメラの近くにエッジデバイスを設置し、現場でリアルタイムにAI処理を実行できる。学習や管理などはクラウドサービスで行うが、推論はクラウドが停止しても機能し続ける。データ転送が不要なため、高画質な映像のままで高い分析精度を発揮できるという利点もある。セキュリティやプライバシーに配慮して、デバイス自体に映像を保管しない方式を選択することも可能だ。処理結果のみをクラウド側へ送信することで、ネットワーク効率がよく、低帯域な環境でも十分に機能する。

映像エッジAIの3つの課題をWebRTCで解決

とはいえエッジ型の映像プラットフォームにも課題があり、主に3つが考えられる。

1つは、エッジデバイスへの不正アクセスだ。人気のない屋外に設置されることも多いことから、他者が物理的に接触できてしまうため、不正な機器を紛れ込ませるといった手法の攻撃リスクが高い。エッジに保存された映像やアプリケーションをいかに守るか、エッジのアイデンティティをどのように特定するかという点は、解決すべき問題だ。

2つめは、カメラのライブ映像やエッジに録画された映像をどのように閲覧するかという点だ。多くのエッジデバイスは、LTE/5G回線を用いてネットワークに接続される。このデバイスのプライベートアドレスにアクセスするには、ルーターでポートマッピングを設定するか、VPNで接続する方法が考えられる。前者は安全性が大きく損なわれるため、安易に設定するわけにはいかない。後者は、VPN機器またはサービスを利用する必要があり、ネットワークを設計・保守するエンジニアも欠かせない。そのため、特に僻地や高所などで活用するには向かない。

最後に、商用電源の問題だ。山奥など電源を確保が困難な場所に設置する場合、自然エネルギーや蓄電池の活用を前提にしたうえで、映像AIをサポートできるかどうかという点には注意が必要である。

「EDGEMATRIXの映像プラットフォームは、こうした3つの課題を解決するための核として、『WebRTC』技術を採用しました。WebRTCによるP2P型ネットワークをベースに構成することで、セキュリティやスケーラビリティの課題を低コストで解決することに成功したのです」(佐藤氏)

映像AIのビジネス活用を実現! WebRTCをベースにしたEDGEMATRIXの強みとは

EDGEMATRIX株式会社常務執行役員 プロダクト&サービス本部プラットフォーム開発ユニット リーダー佐藤 剛宣氏

WebRTCは非常に注目されている技術の1つで、シンプルなAPI経由でWebブラウザやモバイルアプリへのリアルタイム通信を実現する。最近ではWeb会議アプリケーションなどで多用され、2020年以降は急速に技術仕様の策定が進んだ。EDGEMATRIXの映像プラットフォームでは、広範にわたってWebRTCの技術を活用しているが、佐藤氏によれば大きく2つのポイントがあるという。

1つは、プライベートアドレス同士を接続するために、特殊なプラグインやデバイスを導入する必要がないという点だ。一般的なWebブラウザであれば対応可能で、エッジ側においても特殊な機器は不要となる。それにより上述のような僻地への設置がしやすいことや、コンシューマユーザーにもサービスを提供可能であるということがメリットとしてあげられる。

2つ目は、スケーラビリティを確保できるという点である。サーバーを介さないP2P通信によるストリーミング方式は、クライアントで負荷の大きなエンコーディングを行う必要があるため、接続数に比例してメディア送信の負荷が高まるという欠点がある。そこでEDGEMATRIXでは、ハードウェアエンコーダを搭載し、この処理能力をクライアントで共有するというデザインを採用した。これもWebRTCだから実現できた手法で、CPUは非常に低負荷で済み、大規模なサービス環境も十分に構築できる。特に商用利用の場合、多数のユーザーへ環境を開放する(映像の視聴を許可する)ケースも想定されるため、この特性は非常に重要だ。さらに消費電力を抑えられるという点でも、エッジ型の映像プラットフォームに適している。

成長するEDGEMATRIXをさまざまなビジネスへ

2020年は、映像AI/映像プラットフォームの分野がめざましく進展した。中でもカメラの進歩は早く、市販の最先端カメラにAIが搭載されるようになったほどだ。つまり、汎用的なAIによる推論はカメラ側で実行できるため、映像プラットフォームにはより高度・専門的なAIアルゴリズムが求められるということである。

「EDGEMATRIXでは、時系列を考慮して映像をトラッキングする『EMPyCustom』をサポートしています。従来、映像とはいっても実際は切り出した画像を処理してつなぎ合わせていたため、人の動作を認識・分析することは困難でした。この技術を利用すれば、人の動作を連続的な活動として検知できるため、さまざまなサービスへの活用が期待できます」(佐藤氏)

EDGEMATRIXは、今後も映像プラットフォームの機能拡張を継続していく。その1つに、P2Pの特長を生かして、具体的に体験できる機能へと昇華させる計画がある。

特に期待したいのは、ビジネスへの活用である。映像プラットフォームは、社内に閉じた環境で利用するだけでなく、たとえば自治体が市民に対して、映像サービスを配信するケースなど、第三者にサービスとして提供する形態が期待されている。従来のVMS+VPNの形式では考えられなかった活用方法だ。

また、監視カメラとしての活用方法では、多様なアラートから映像視聴・表示に連携する機能強化が進んでいる。既存のIoTセンサーを活用したり、AI搭載カメラが発するメタデータを受信してアラートとして活用したりと、多彩な連携方法が期待できる。将来的には、何らかの音声をトリガーにすることも考えられる。

「Web会議システムなど、ほかのWebRTCクライアントと接続する機能も開発中です。つまり、Google MeetやZoomなどからエッジの映像へアクセスできるというわけです。それにより、いつも使っているモバイルアプリをビューアとして活用したり、会議中に現場の映像を表示して対応を相談したりと、さまざまな活用方法が期待できますね」(佐藤氏)

EDGEMATRIXは、エッジのみにこだわらず、VMS型映像プラットフォームへの回帰にもチャレンジしたい意向だ。既存のEDGEMATRIXのソリューションは、多数のカメラで多数のアプリケーションを実行できる点がメリットだが、介護施設や商用施設など多数のカメラで同一のアプリケーションを共有するというニーズもある。

ごく単純な監視システム ── ネットワークビデオレコーダー(NVR)との連携も計画中とのことだ。NVRは簡単に利用できるが、VMSのように他のシステムとの連携は期待できない。解析済みのストリームをNVRに送る仕組みを開発中である。また、より簡易にVMSと連携するため、タイムスタンプと推論結果のみをメタデータとしてVMSへフォワードする機能も予定している。

映像エッジAIをベースに、必要なデバイスやネットワーク、クラウドインフラをソリューションとしてまとめたEDGEMATRIXは、今後もさらなる進化を遂げることだろう。多様な現場で高度な推論をリアルタイムに実行し、モダンなサービスを提供できる映像プラットフォームにぜひ注目していきたい。

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