2050年までに、世界人口の3分の2以上が都市部に住むようになると推定されている。このような変化の中、各国政府は持続可能性、安全性、繁栄を担うスマートシティー(次世代環境都市)に焦点を当て、新たな都市化の時代に向けた取り組みを加速している。「スマートシティー×第5世代通信(5G)」をテーマにビデオ監視の役割と、飛行ロボット(ドローン)の活用を紹介する。
半世紀にわたり都市人口の大幅な増加を経験してきた日本は、先進的な技術を都市デザインに生かすことを柱とする「スーパーシティ構想」を通じてスマートシティー実現に向けた取り組みを進めてきた。行政、物流、交通から医療、教育、防災、安全に至るまで、幅広い分野で社会経済システムの発展に貢献すると期待されている。
スマートシティーの根本となる革新的技術として、人工知能(AI)、ビッグデータ(大量データ)、機械学習などが挙げられる。AIや機械学習は、急成長中のビデオ監視分野に活用することで、都市の安全性をかつてない水準に高められる。
しかし、その活用には、5Gネットワークならではのモバイルブロードバンド機能の強化が必要となる。すなわち、高解像度カメラの帯域幅要件をサポートし、リアルタイムのビデオフィードを配信する機能である。
こうした機能は、ビデオ監視の大規模展開を可能にし、スマートシティーにおけるビデオ監視の新たなユースケースを開発するために不可欠となる。
5Gは、超高速、高信頼、低遅延という特徴により、工場や店舗の監視カメラなどで使うCCTV(閉回路テレビ)ネットワークを無線化でき、ビデオ監視分野に大きな変革をもたらす。5Gにより、大規模なCCTVカメラ網の展開が可能になり、高解像度のリアルタイムフィードを送信できる。
従来のCCTVカメラのデータ伝送は、ケーブルや光ファイバー接続に大きく依存していた。特に高密度の都市環境において、大規模な実装や管理は複雑で費用がかかる。一方、5G接続は無線であるため、状況認識と意思決定を向上させるだけではなく、分析のための映像送信が容易になる。ただ、高解像度の映像をリアルタイムで送信すると大量のデータ通信が生成される。より正確なデータの保存には、より多くのカメラが必要になり、データ通信量は何倍にも膨れ上がる。
だが、5Gネットワークの帯域幅容量が大幅に増えたことにより、ネットワークを仮想的に分割して提供する「ネットワークスライシング」でCCTV専用のチャンネルを作成できるようになった。可能なかぎり低遅延で高解像度の映像を送信できる。
5Gのさらなる利点として、カメラを機器本体や車両、ドローンに取り付けるなど、新たな監視システムを実現できる。CCTVカメラが多目的センサーとなり、映像をさまざまな方法で分析できるようになるため新たな監視機能が実現する。
ノキアソリューションズ&ネットワークス最高技術責任者 柳橋達也
日刊工業新聞2021年7月16日