キャッシュレス決済の進化は著しいものがあるが、同時にスマートロックの進化も目覚ましい。
もはや「鍵」と呼ばれるものはスマホかウェアラブルデバイスに組み込まれた位置機能に過ぎず、ギザギザの物理鍵は消え行く一方かもしれない。
では、もしもキャッシュレス決済とスマートキーが同じウェアラブルデバイスに搭載されるようになったら、我々の生活にどのような変化が訪れるのだろうか?
「財布」と「鍵」が同義語になる近未来が、そこまで近づいている。
Visaタッチ決済に対応の指輪
3月15日、決済用スマートリングを手掛ける株式会社EVERINGとスマートロック事業を展開する株式会社ビットキーが、製品機能の連携を発表した。これは一言で言えば「財布と鍵の合体」である。
まずはEVERINGについて解説しよう。これはVisaタッチ決済に対応したプリペイド型決済スマートリング。
紐付けしたクレカから残高を充填する方式だが、EVERING自体は全世界のVisa加盟店で利用できる。
筆者は先日、「Visaタッチ決済の普及で日本のキャッシュレス業界はどう変わる?」というタイトルの記事を@DIMEで配信した。
実はEVERINGも、Visaタッチ決済の拡大が生み出したガジェットである。
交通系ICカードとはまた違う規格の非接触型決済が登場するというのは、このような新しい製品を登場させるということだ。
EVERINGは、見た目も使用感も「ごく普通の指輪」である。素材はジルコニアセラミック。サイズはUS4.5から13までの全17種類だ。
グローブのような筆者の手でも、女の子の手でも適切なサイズを選べばピッタリとフィットする。
そんなEVERINGを、スマートロックの非接触型解錠デバイスとして活用しようというのが此度の機能連携である。
さらば長財布!
株式会社ビットキーのスマートロックbitlock MINIと拡張デバイスbitreader+を玄関ドアに設置し、EVERINGでそれを解錠できるようにする。その仕組みの実現は、文字通り「手ぶら生活」の実現でもある。
バブル期の日本では、スーツのスラックスのポケットに大きな長財布を差すのがトレンドだった。ワニ革だのオーストリッチだのの財布には、大勢の福澤諭吉が詰め込まれていた。
しかし、そんな光景も今や昔。現代では可処分所得に恵まれた人ほどスタイリッシュというか、よりミニマリズム的な容姿だったりする。「余計なものを携帯していない」ということだ。
EVERINGを所持していて、なおかつVisaタッチ決済が今よりもさらに普及すれば、もはやスマホすら必要なくなる。なお、EVERINGは充電を必要としない。「着けっぱなし」ができるのだ。
「Visaタッチ決済が今よりもさらに普及すれば」というくだりの一基準は、「セルフガソリンスタンドで使えるようになるか」という点だと筆者は考える。
都市部から山間部に至るまでのスタンドでVisaタッチ決済が利用可能になれば、財布どころかスマホも自宅に置いたままロングドライブもできるようになるはずだ。
その上で、自宅の玄関ドアの解錠までEVERINGでできるとしたら、我々現代人の生活様式は大きく変わるに違いない。
アパートにもスマートロックを導入できる!
bitlock MINIは「工事不要のスマートロック」である。即ち、玄関ドアに修復不可能な改造を施さなくても設置できるということだ。退居の際はbitlock MINIを自分の手で撤去することも可能。
これは「集合住宅の玄関にも設置できる」という意味でもある。
もっとも、いくら工事不要といっても大家と管理人の理解は必要不可欠だ。このあたりで温度差が生じることもある。
実際に筆者の知人も、スマートロックを導入するためにアパートの大家と話し合ったとのこと。今の時点で「スマートロックって何?」と首を傾げる大家もいるはずだ。
が、キャッシュレス決済と同じように時が経てばその存在も認識されるようになる。
EVERINGとの機能連携をきっかけに、スマートロック自体が「次世代のセキュリティーデバイス」として広く知れ渡っていく可能性もあるだろう。
【参考】
EVERING
Bitkey Store
スマートリング「EVERING」に新機能追加 指輪をかざすだけで“ドアの解錠”も可能に-PR TIMES
取材・文/澤田真一