裸眼で見るとQRコードなどが見えないが、赤外線カメラを通して見ると透けて見える
米MIT CSAILと米Facebook Reality Labs(現Meta Reality Labs)の研究チームが開発した「InfraredTags: Embedding Invisible AR Markers and Barcodes Using Low-Cost, Infrared-Based 3D Printing and Imaging Tools」は、3Dオブジェクトの内部に目立たないようにタグを埋め込む技術だ。QRコードやArUcoマーカー、バーコードなどの肉眼では見えない2次元タグを埋め込み、赤外線カメラを通してなら読み取ることができる。【画像】赤外線カメラで隠れたコードやマーカーを読み取ると、家電の操作などが可能 研究では、複雑な加工や高額な撮像装置を必要とせず、物体の形状にマーカーやバーコードを埋め込む手法を提案する。これは、市販のFDM(Fused Deposition Modeling)3Dプリンタと、市販の赤外線(IR)透過型フィラメントで造形し、市販の近赤外線カメラを使って検出することで実現する。 物体の主要な形状はIRフィラメントで3Dプリントし、タグ自体はビットのための空隙を残して作成する。主な形状は赤外領域では半透明なので、近赤外カメラはそれを透視してマーカーを撮影することができ、画像内では異なる強度で表示する。 これによって、対象の赤外線タグを読み取れる。物体内に複数のタグを埋め込めるため、部分的なオクルージョンを許容しながら、複数の角度からスキャンできる。 タグを3Dオブジェクトに埋め込むために、ユーザーがタグをエディタに読み込み、任意の位置に配置できるユーザーインタフェースを構築した。また、3Dプリントの内部に埋め込まれたタグを識別するための画像処理パイプラインも作成。実験では、わずかな近赤外光(0.2lux)で、250cmの距離からタグの検出に成功した。 従来のスマートフォンでも赤外線タグを検出できるように、既存のモバイル機器に取り付け可能な小型モジュールを作成し、近赤外撮像機能を追加した。 これにより、ユーザーがスマートフォンを使って写真を撮ると、カスタム画像処理パイプラインがコントラストを上げてタグを検出し、AR環境で家電製品やデバイスを遠隔操作する、Wi-Fiのネットワーク名とパスワードを読み取るだけで入力する、既存の物体をゲームのコントローラーとして利用するなど、3Dオブジェクトとの新たなインタラクションが可能になる。 ※テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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