浜松総局 荻島浩太
浜松市中区の複合商業施設ザザシティ浜松西館に来春にも、ボートレース(競艇)の場外舟券売り場「ボートレースチケットショップ オラレ浜松」(仮称)が新設される。県内で場外舟券売り場はこれまで小山町と焼津市に設置済みだが、中心市街地への創設は初めて。運営する浜名湖競艇企業団は小山町、焼津市の事例と同様、売上金の1%を浜松市に納め、地域に還元する。一部のファンのための施設に終わらせることなく、地元住民がまちづくりの観点で長期的に舟券売り場の運用に関心を持ち、中心市街地の活性化につなげたい。
舟券売り場を巡っては4月、地元の鍛冶町自治会が設置に同意した。鈴木康友市長の同意、市議会の反対意見がないことを確認した上で、浜松中央署との協議を8月下旬に完了した。国土交通省への許可申請手続きなどが順調に進めば、来年4月にも開設できる。 ■賛同の背景に前例自治会からは環境変化を懸念する一部反対意見はあったものの、「(ザザシティ内の)テナントを早期に埋めることがにぎわい復活につながる」との意見が多くを占めた。市中心街では商業ビル「かじ町プラザ」内で2011年から日本中央競馬会(JRA)、13年から地方競馬の各場外馬券売り場が営業している。現在までに目立ったトラブルや騒音問題は起きておらず、この経験も基になって賛同が得られたといえる。 もちろん、住民には「安全対策が最優先」との思いが強い。湖西市でボートレース浜名湖を運営し、県内外4カ所に場外舟券売り場を持つ同企業団は、オラレ浜松に初めて防犯カメラ顔認証システムを導入する。入居するザザ西館地下1階に専用出入り口を設置し、地上階の買い物客や未成年の来館者らとの動線を分けるという。 ■市に売上金の1%オラレ浜松は窓口5カ所程度の小規模施設で、1日平均の売上金は650万円を想定する。中心街の防犯対策や環境美化事業などへの活用を想定し、売上金の1%を環境整備協力費として毎月浜松市に収め、年間で2340万円が市に入る計算。その使い道は市と、地元町内会などが連携して創設する団体の両者で協議して決める見込み。 焼津市は約3600万円、小山町は約2200万円が毎年一般財源に入っている。同企業団が舟券売り場を運営する福島県玉川村は協力費の使途を明確に定めて中学生の修学旅行や植栽整備の費用に充て、その活用成果を村民に積極発信する。鍛冶町自治会の役員は「1%分が地域の将来に役立つ使われ方をするよう、住民側も注意を払いたい」と話す。 今後、町内会や市、警察、PTAが参加して環境整備対策協議会を設置し、オラレ浜松の運営状況の確認や地域の意見の提言を定期的に行っていく。同協議会がチェック機能を維持できるかどうかは重要な課題だ。 今回の舟券売り場の計画は、ザザ西館の大手玩具チェーン「トイザらス浜松店」の撤退表明を機に一気に進んだ。一方、トイザらス跡の大型テナント誘致の可能性は不透明な状況。舟券売り場の開設効果を最大限生かすためにも、家族連れらの回遊性を高めるようなテナントを早期に呼び込む必要がある。周辺の繁華街は長引くコロナ禍で景況は厳しい。中心街の商店経営者は「売り場の誕生は苦境の中心街にとっては前向きと捉えたいニュース。中心街の活性化策をみんなが考える契機になれば」と願う。
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