バリュートープ 代表取締役佐久間昌夫氏(IAAE 2022セミナー)
国際オートアフターマーケットEXPO2022(IAAE 2022)のセミナーで、ITを駆使して一人で回せるレンタカー事業に関するセミナーが開催された。登壇したのは「オールタイムレンタカー」を運営するバリュートープ 代表取締役佐久間昌夫氏。カーシェアが伸びた原因にコロナ禍もあるが、その後も稼働は増えているオールタイムレンタカーは、渋谷駅・恵比寿駅から徒歩10分圏内にステーション10か所、30台の車両を展開している。レンタカーの予約やドアロック解除・施錠、決済などはアプリとスマートキーによってすべてが無人(非対面)で完結する。日産自動車が提供する「eシェアモビ」のサービスと似ているレンタカーサービスだ。オールタイムレンタカーが利用しているスマートキーは「バーチャルキー」と呼ばれる製品だ。バーチャルキーの特徴は、物理キーがなくても一般的なリモコンキーに対応していればアプリでキーの操作が可能なこと。車両への改造が最小限で車検登録の変更や改造届などが不要であることだ。ほとんどの年式の車両を非対面のレンタカーやシェアカーにすることができる。「事業スタートは2020年。当初は4ステーション、10台ほどしたが、2021年12月の時点で10ステーション、30台まで車両が増えています。アプリのインストールは約5000件。会員数が約3000件なので、登録率は60%を超えます。月間の貸出日数も順調に右肩上がりを続けており、現在は月あたり300日以上になっています」30台のうち10台が毎日貸し出されている(稼働している)という計算だ。これを、佐久間氏はひとりで、稼働していない車の清掃まで行っている。オールタイムレンタカーの事業で他に従業員やアルバイトはいないという。貸出業務やトラブル対応などを考えるとにわかに信じがたいが、土日は普通に休めるともいう。「アプリとスマートキーで基本的な手続きは完結させ、スマートキーにより無人の貸出・返却も可能です。問い合わせやトラブルはマニュアルを整備してコールセンターに委託しています。車検や整備も専門の事業者と契約していますし、スマートキー対応業者なら、車両の入庫・納車も無人でできます」月曜はだいたい車両の事故やトラブルの処理や手配で整備工場との連絡を行い、稼働がいちばん低い水曜に空いている車両の清掃を佐久間氏が行っている。週末にいちばん稼働が上がるが、ほとんどオペレーションを無人化、外部委託としており佐久間氏としては、いちばん休めるのが土日だという。オールタイムレンタカーの特徴は、顧客層にもある。会員の85%が20代と30代。このうち20代が62%と6割以上だ。しかも20代、30代の次が10代(8%)という状況だ。自動車業界の多くが諦めている若年層を押さえたビジネスとなっている。佐久間氏はこれほど若い人に受け入れられるとは思っていなかったそうだが、渋谷や恵比寿という街の特性とも合致したサービスとなったようだ。話を聞くと、佐久間氏は車両の清掃以外あまりすることがないようだが、注力しているのはステーションの場所の確保と集客だそうだ。「駅の近くでステーションを確保するのが大変です。また、やはり認知してもらって使ってもらわないと成立しないので、告知や集客も重要です。地域型なのでチラシ広告などもやりましたが、2021年3月くらいにウェブのリスティング広告を始めたところ、会員数が目に見えて増え始めました」アプリや非対面サービスなどが若者に受け入れられる一方、レンタカー事業ならではの懸念もある。代金の回収や事故・トラブルの対応だ。この点については「事故やスマートキーなどのトラブルは、コールセンターのマニュアルで対応できるようにしています。警察や保険会社への連絡、修理について一連のアドバイスをしています。全体の80%くらいは想定した処理で対応できています。そして、これは結果ですが、例えばガソリンの満タン返しは95%くらいの人が守ってくれています」という。レンタカー事業の場合、免許証の情報や緊急連絡先などの情報を提供されるので、年齢にかかわらずあまり非常識な人はいないようだ。もちろん、悪質な人や通常処理では対応できない事例もあるという。そのような場合でも、緊急連絡先が親や家族であることが多く、修理代の回収ができないことは少ないそうだ。規約違反などによる退会のルールもあるが、ポイントは「特殊な事例にこだわらず、自分の中でルールや線引きをすること」だそうだ。
レスポンス 中尾真二