■踏み間違いを防ぐためには
●相次ぐ高齢者による操作不敵による事故
近年、ニュースなどで報道される機会が増えているアクセルとブレーキの踏み間違えによる事故。予想外かつ突発的に起きることの多いこの事故は、時に悲惨な結果を生むこともあります。
中でも2021年11月17日に、大阪府大阪狭山市のスーパーマーケットで発生したペダルの踏み間違えによる事故は記憶に新しいでしょう。
報道によると、クルマを運転していた89歳のドライバーは、「クルマを止めようとしたが、アクセルとブレーキを踏み間違えた」と話しています。この事件により男性1人が死亡、女性2人が怪我をし、ドライバーは過失運転傷害の疑いで逮捕されました。
このような高齢者の操作不敵による事故が目立っていますが、これはデータにも現れているようです。
交通事故総合分析センター「ITARDA(イタルダ)」が、2018年2月に発行した交通事故分析レポート「アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故」によると、ペダルの踏み間違いなど操作不適による事故の年齢層別の割合は75歳以上がもっとも多いと発表されています。
●踏み間違えはなぜ起こるのか?
なぜアクセルとブレーキの踏み間違えによる事故が起きてしまうのでしょうか。
一般的な要因としては、加齢による視覚機能や注意力、集中力の低下、反射神経の鈍化などの、身体能力の低下が挙げられます。
その上で、踏み間違え事故にはいくつかの共通点があるようです。
「ITARDA」のレポートを見ると、どの年齢層においても、駐車場(サービスエリア、店舗の駐車場、パーキングエリア)が、もっともペダル踏み間違え事故割合が高いことが示されています。よって、共通点は「場所」にあると言えます。
では、なぜ駐車場では踏み間違えが起きやすいのでしょうか。これは、駐車時の「ペダルを踏み変える回数」「後方確認時の不安定な体勢」などが関係していると考えられます。
駐車時は、前方・左右・後方への確認を繰り返しながら、シフトレバー・アクセル・ブレーキを交互に使用する必要があり、必然的に作業工程が多くなる傾向にあります。これらの動作を足し算のように繰り返すことで、駐車という答えにたどり着きますが、どこかで間違えてしまうと踏み間違えという計算ミスが生じてしまいます。判断力が鈍っている時はなおさらです。
また、後退時には後方を確認しながら操作する場合もあります。この時、体をねじることで、足の位置もずれてしまったり、アクセルとブレーキの正確な位置を把握できないまま踏み込んでしまうこともあるようです。他にも、かかとの位置がずれたり浮いた状態のまま踏み込んでしまうと、想定よりも大きな力がペダルにかかってしまいます。
駐車時にはこれら全てのことを冷静こなす必要がありますが、1つのミスがパニックを呼び、1つのパニックが掛け算のようにさらなるミスを引き寄せます。先日起きた、大阪での事故がこの典型的な例でしょう。
ドライバーは、「駐車ひとつで、大きな事故につながるかもしれない」ということを忘れてはいけません。
●再発防止策は?
では、どのような防止策があるのでしょう。
大きく分けて2つのパターンがあります。1つはドライバー自身によるアクション、もう1つはクルマ側のアクションです。
ドライバーが気をつけるべき点として挙げられるのは、正しい運転姿勢を心掛けることです。シートの高さや位置を正しく設定することも、踏み間違え防止に重要なことです。ハンドルやペダルから体が遠い場所にあると、かかとが浮いたり、細かな操作が行いづらくなります。また、サンダルやヒールの高い靴は避け、運転に適した靴を履くことも大切です。
もちろん、スマホなどの集中を阻害するものは運転中に使用しないことは当然です。
次に、クルマ側から考えると、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能などの、安全装置が搭載された車両を選ぶのも対策の1つです。なお、該当する安全機能が搭載されていないクルマには、後付け可能な対策アイテムを用いるという手もあります。しかし、これらはあくまで予防に対する補助策にすぎません。
予防はしていても、予想外の場所で起こってしまうのが踏み間違えによる事故です。ドライブの際には、「冷静さ」と「程よい緊張感」の同行も必須でしょう。
(梅村 ゆき)
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